●メッキ脆性(ぜいせい)についてのひとこと

●お問い合わせでよく「メッキをすると金属が弱くなると聞いたのですが」という質問をいただき

ます。

端的に言えばこれは正解です。 これを一般に「水素脆性」あるいは「メッキ脆性」と言います。

これは亜鉛メッキやクロームメッキ、ニッケルメッキ等の一般的なメッキにて共通におこります。

ただ、勘違いしていただきたくないのは、これは一般に使う鋼材や、ほとんどの金属では

まったく問題にならないということです。 

この現象が問題になるのはとくに強度、硬さが必要な焼入れ硬化した部品だけです。

そのメカニズムを簡単に言いますと、メッキ工程の中で酸を使用するのですがこの酸が金属の内部に

侵入、この酸から水素原子が遊離しそれが時間を置くと水素分子になります。 この水素分子になる

ときに膨張して、金属の内部から数百気圧という力で表面に向かって金属を破壊しようとする力が

金属を脆くさせるのです。 この力を引っ張り残留応力と言います。

引っ張り残留応力はとくに焼入れ硬化した高強度、高硬度材において著しく現われ、メッキ後に表面

にクラック(ひび)が入り、酷い場合にはちょっと衝撃を加えただけで瞬間に割れてしまいます。

通常の鋼材ならば充分に柔軟性があるので、この程度の応力はキャンセルできる余裕があるのです。

私の経験的には焼き入れ硬さにしてHRc50以上のものが問題になりやすい感じです。

また、品物の形状や表面の粗さによってもその影響は大きく変わってきます。 やはり応力の集中

しやすい形状や、表面のやたら粗い品物は影響を受けやすいです。

(ちなみに引っ張り残留応力は鋼を脆くしますが逆に、圧縮残留応力は鋼を強くし、しかも磨耗

を減少させることができます。 これを意図的に発生させる処理にタフトライド、表面焼き入れ、

ショットピーニング、WPC処理等がありますが、これにつきましてはまたの機会にしたいと思います)

●では、これは避けようがないと言うことなのかといいますと、もちろん対策はあります。

本来は上記の理由からメッキを避けたい部品でも、どうしてもメッキをする場合は「ベーキング」と

いう処理をします。 要はメッキ後に熱するのです。

つまり水素原子が分子になる前に品物を200度ほどの温度で3時間から4時間ほど熱し、内部の水素を

追い出してしまうわけです。 私は基本的に高強度材にはメッキはしない主義なのですがどうしても

必要という場合はこのベーキングは必ず行なっております。

また、市販のメッキされた高力ボルト等のネジもすべてこの処理が行なわれております。

●なお、当方に処理の依頼、あるいは製作の依頼の際に、もしこれらが問題になると判断した場合は

私のほうからきちんとアドバイスいたしますのでご安心ください。

メッキをしても問題ない場合は何も言いませんが、部品的にあるいは材料、熱処理的に問題がある

とき等はハッキリと「これはメッキしないほうがいいです」と申し上げています。

もちろんそれに変わる処理や代替案はいくらでもありますので、その辺は臨機応変に対応できます。

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