●エンジンの暖機運転についてのひとこと
●以前、慣らし運転についての私の個人的な考えは書いたのですが、暖機運転についてもひとこと
に載せて欲しいと言うリクエストがありましたので、個人的な意見になりますが書かせていただき
ます。 現在は環境問題もありますので無意味な暖機運転は推奨されない考えもありますが、やはり
どんなに機械精度が上がっても、慣らし運転同様、暖機運転も必要です。
これには大きくわけて2つの理由があります。
●1つは熱膨張による影響です。
エンジンは回転および往復運動する部分の集合体であり、それらの部品の接触部にはクリアランスが
必ず必要であり、このクリアランスは多すぎても少なすぎても悪影響があります。 なおかつ設計時
はエンジンが常用される温度域において、各部のクリアランスが最適化されるように設計されていま
すので、当然ながら冷間時にはクリアランス過大になっているのが通常です。
例えばピストンとシリンダーのクリアランスの関係でいいますと、冷えているときはピストンは径が
小さくなっているだけでなく、ピストンの設計をご存知の方なら知っていると思いますが、ピストン
トップ部とスカート部の肉厚の違いによる熱膨脹の違いを考慮して、ピストンの形状は極端な言い方
をしますと円錐状に作られています。
この状態でそのままシリンダー内をスライドさせた場合、当然ながらシリンダーとの接触は局部的に
なっています。 その状態でいきなり高い負荷で回すと局部的に接触圧力が高まり、その部分は油膜
が切れて異常磨耗したり、カジリが生じたりしやすいのです。
だから、発進するまでにできるだけ暖機させてピストンを膨脹させておきたいわけです。 これは
特に、素材の密度が高く熱膨張の大きい鍛造ピストンでは重要なポイントです。
●2つめはオイルの吐出量です。
現在のエンジンオイルはマルチグレードオイルが普通ですが、それでもエンジンが冷えているときは
かなりオイルの粘度が高く、流動性が悪いのは今も昔も変わらないのです。
エンジンに油圧計をつけている方ならわかると思いますが、エンジンによって差があるので一概には
言えませんが1例として挙げますと、エンジンが暖まった状態では、たとえばアイドリング時は油圧は
2kほどで、それが4kに達するのが4000rpm位だとした場合、エンジンが冷えた状態ではアイドリング
回転数でもすでに4k以上の油圧に達している場合があります。
エンジンは油圧を一定に保つために一定以上の圧力(通常は4k〜5k程度)がかかるとリリーフバルブ
が開いて、それ以上のオイルはエンジンに送らずにオイルパンにリターンさせる構造になっています。
つまり、エンジンが冷えている状態ではすでにアイドリングの時点でリリーフバルブが開きはじめて
いるわけですから、油圧は高くても、実際にエンジンのオイルラインに送られているオイルの量は
暖まった状態よりも少ないわけです。
それを気にせずにエンジンを高い回転まで回すと、暖まった時に比べてエンジンに回るオイルの絶対量
が不足していることになるわけです。
つまり、油圧は充分であっても、油量が足りない状態になってしまっているという訳です。
この状態で回転を上げてしまうと、充分に潤滑されていないためにメタルを傷める可能性があります。
ですので、とくに走りはじめて5分から10分くらいはシフトアップでも回転を3000回転より上げない
ようにしたほうがいいでしょう。
とくに回転を上げ気味な小排気量のエンジンでは気をつけないといけませんね。
●以上の2点の理由から私は暖機運転は必ず必要だと考えています。
だからと言って、たとえば水温計が真ん中になるまでアイドリングを続ける必要はなく、夏場では
せいぜい1分、冬場で3分程度で充分でしょう。 要はエンジンに充分オイルがまわるまでというのが
基準ですね。 インジェクションのエンジンならファーストアイドルが下がりはじめるくらいが丁度
いいくらいだと思います。
ですが、重要なのはこのあと走り出してからです。 エンジンはアイドリングでも暖まりますが、
当然ながらミッションやデフ等の駆動系のオイルや回転部は走り出してからはじめて暖めることが
できます。 ですので走り出してからたとえば最初の数キロはエンジンもあまり回さず、優しく運転
してやることがよりクルマの寿命を伸ばしてやることに繋がると思います。
●もちろん、こうした意見に対して「暖機運転などしなくても10万キロ以上エンジンは持つよ」と
いう意見もあるでしょう。 もちろんそれはそれで結構です。
しかし、こうしたことは「機械に対しての思いやり」だと私は思っています。 クルマやバイクに
限らず、私も今までいろんな産業機械や工作機械に接してきましたが、「機械は正直」なもので、
丁寧に扱えば扱っただけ長持ちしてくれます。 しかし重要なのはただ持つだけでなく、ベストな
コンディションの状態をどれだけ長く維持できるかということだと思っています。
つまり、エンジンを長く使用するだけなら暖機運転は必要ないかもしれませんが、できるだけ高い
性能を維持したまま使用するためにはこうした日常の気遣いや、メンテナンスに勝るものはないと
思いますので。
●もちろん、これ以外にも例えばサスペンション等のゴムブッシュも温度によって柔軟性も変化し
ますし、タイヤだってある程度暖まらないと本来の性能を発揮できません。
結局、クルマの細部に渡って程度の差こそあれ、暖機というのは必要だと思います。
人間だって運動する前にはウォーミングアップとして準備運動をしますよね。 それと同じです。
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