●ボルトの材質の選択についてのひとこと

●自動車に限らず、パーツを締結するボルトにはその箇所によって求められる特性により様々な

材質、熱処理、表面処理が施されています。

 

●まずは通常使用される鉄鋼系のボルトについてです。

通常、もっとも広く使用されているボルトはJISで言うとS20C〜S30C前後の材質で、つまり炭素分

0.2〜0.3%程度の低炭素鋼です。 外観で言うと一般的な銀色、金色(虹色)、緑色、黒等の亜鉛

クロメートによるメッキが施されています。 この炭素量ですので焼き入れ硬化は望めません。

あと、建築等で用いられる高力ボルトと呼ばれるものがありますが、これはS45C、すなわち炭素量

0.45%以上のものを用い、脆くならない程度の硬さで焼き入れ(HRc35程度)されています。

これはボルトの頭に4Tとか8Tとかの強度区分を示す刻印がありますが、車やバイクではあまり

使われません。

 

●次にステンレス系のボルトです。

市販で主に出回っているものはSUS304材で、形態としては通常の6角ボルトからキャップボルト等

ほとんど鉄系のボルトと同じ形状のものが入手できます。

ステンレスボルトは当然ながら錆に強いので、ご自身でボルトをステンレスに換えてしまう方も多い

とは思いますが、たしかに通常使用されているボルトをステンレス製に換えるのには大きな問題は

ありません。 ただ、高力ボルト、即ちとくに強度を要求されるボルトについては下手に交換は

しないほうが得策です。 SUS304等のオーステナイト系ステンレスは素材としての強さはそれほど

高くなく、なおかつ伸び易いという特性がありますので、機械的強度がとくに求められる部分に

ついてはもともと付いていたボルトのままのほうが安全です。

それと排気系等の高温部への使用についてです。 ステンレスは基本的に耐熱鋼の一種ですので

高温時の酸化に対して非常に抵抗力があります。 が、同時にカジリやすい、熱膨張率が通常の

鉄系のボルトより大きい、熱伝導率が悪い、鉄素材等の異種金属同士の接触による電位差腐蝕に

より錆びることがある… 等のマイナス面も同時に持ち合わせています。

ですので、例えば排気系のボルトをステンレスに交換する場合は、カジリ防止の為にボルトのネジ

部にスレッドコンパウンドなど、銅やモリブデン系の粉末を含有した専用のグリスがありますので

それらを塗布した上で使用されるほうがいいです。

また、鉄よりも熱膨張が大きいことから、弛みやすいので、たまに弛んでいないかチェックする

ことも必要かと思います。

お気付きかと思いますがボルトの材質を通常の鉄鋼系のものからステンレスに変えた場合、熱伝導

率が変わる、熱膨張が変わる、引っぱり強さが変わるということですから、当然のことながら標準

で指定されている締め付けトルクの数値はもはやあてにできないということになります。

これも、むやみに安全上重要な部分のボルトの材質を交換すべきではないという理由のひとつです。

なお、ステンレスのこの性質の一部はチタン材にも当てはまりますので、同様に考えてください。

 

●高力ボルト

主にキャップスクリュー(6角穴があるボルトです)でよく使われるボルトでして、主に材質は

SCM435等のクロームモリブデン鋼が使用されます。

表面処理は強度によって異なり、強度区分10.9までは亜鉛メッキのものがありますが、強度区分

12.9の最高強度の物はメッキによる脆性を避けるためにメッキせず、四三酸化鉄皮膜、いわゆる

「黒染め」によって処理されています。 この黒染めはメッキではなく、金属表面に多孔質の

層を作りそこに防錆油を含浸させることにより錆を防いでいるだけですので、水分がかかったり

するとすぐに錆びます。 なお、強度区分については前回の「ひとこと」を参照ください。

このボルトは同じサイズならば通常の鉄系のボルトに比較して3倍から 4倍の引っ張り強さがあり

ますのでとくに機械部品については使用されますが、こと自動車やバイクになりますと錆びやすい

ことから、エンジン内部など直接水分や大気にさらされない箇所を除いては、純正部品で採用され

ることはほとんどありません。

 

●このように、金属材料というのは基本的に強度と耐蝕性は反比例するものであり、また、ステン

ボルトやチタンのように「高級素材」と思われるものも、その材料のもつ特性だけでなく、相手

材料との相性(腐蝕やカジリ、焼き付き性等)もありますので、これらのことを総合的に判断して

ボルトの材料というものを選択することが重要となります。

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