●ガソリンについてのひとこと

●ガソリンと言っても、私も化学的、専門的なことはよくわかりませんので、あくまでも

実用面からハイオクガソリンとレギュラーガソリンの違いと、それの選択理由などについて

書きたいと思います。

 

●まずハイオクとレギュラーの違いについてですが、これは文字どおりオクタン価の違い

によるものです。

ここでオクタン価というのは一言で言えば「アンチノック性」のことで、要するにプラグの

スパーク以外での自然着火を防ぐ性能のことです。

ここでオクタン価というのは何かということですが、これは基準となる燃料のアンチノック

性から決められた基準で、もっともノッキングを起こしにくいとされるイソ・オクタンという

燃料を100、逆にもっともノッキングを起こしやすいノルマル・ヘプタンという燃料を0とした

ときに、その混合比からオクタン価を表わすものです。

ただ、実際のガソリンはあらゆる添加剤の混合体ですので、たとえばオクタン価95という燃料

もイソ・オクタンが95入っているという意味ではなく、イソ・オクタン95%に相当するアンチ

ノック性能を有しているという意味です。

ですので、レースガソリンなどではオクタン価が100を超えるものも普通にあります。

 

●ガソリンエンジンはプラグのスパークによって点火、燃焼することによって正常な回転を

します。

しかし、たとえば他に高温になる部分(プラグの電極や堆積したカーボンなど)が生じて

そこが点火源となってプラグの点火前に勝手に燃焼をはじめてしまうことがありますが、

これをプレイグニッション(早期点火)と言います。

 

また、プレイグニッションと関連しますが、それによって生じた燃焼が正常の燃焼速度

よりもはるかに速く(正常な燃焼の場合の火炎伝播速度はせいぜい30m/s程度と言われ

ていますが、実際には燃焼室内部の流れなどによってその3倍くらいにはなっていると

思われます)異常な燃焼の場合は音速を超える速度で広がり、この際に生じた衝撃波が音

を出すことがあります。 この際に出る衝撃波による音がノッキングと言います。

なお、デトネーションという言葉もよく使いますが、これは「異常燃焼」と一般に言われ

ノッキングを起こす原因のひとつとなりますが、様々な原因で起こるために一概には言え

ません。 ただ、エンジンに良くないことは確かです。

 

●よく街中の走行などでシフトダウンをさぼって加速しようとしたときや、発進のときなど

に短時間に軽く「カラカラ…」という感じで音が出ることがありますが、これもノッキング

には違いないのですが、このレベルのノック音は対してエンジンにとって危険なものでは

ありませんので必要以上に気にする必要はありません。

問題なのは「高速ノッキング」と呼ばれるもので、3速以上のギアでの全開加速をしたとき

など最高出力に近い領域での高負荷、高回転域で発生するもので、音としては「チリチリ…」

に近い音です。

これは非常に危険で、とくにブーストを上げたターボエンジンなどでは数秒でピストンが

棚落ちする危険があります。

しかもこの高速ノッキングはほんとにかすかな音なので、聞こえないことも多いのです。

五月蝿いマフラーや吸気音などがあると聞こえにくいですし、ウェイストゲートの大気開放

などをしていればまったく聞こえません。 しかもエンジンというのはこの高速ノッキング

が起きるか起きないかくらいがもっともパワーが出るので、ドライバーとしてはすこぶる

エンジンの調子が良いと勘違いしやすいのでタチが悪いわけです。

調子よく走っていたら気がついたらエンジンブロー…というパターンに繋がるわけです。

 

●よく点火時期を進めすぎることでノッキングが発生します。

点火時期は通常、燃焼圧力が最大になるポイントを上死点後10度〜15度になるように

逆算して早めに点火するのですが、当然のことながら点火ポイントは上死点前になり

ますので、 まだピストンが上昇中に点火するわけです。

つまり、上死点前に点火した燃焼圧力はピストンを押し戻そうをする力となるわけです

が、この点火時期が早すぎると、ピストンが上昇してくる(圧縮してくる)圧力と

点火によって燃焼しはじめた混合気の圧力が重なって高くなり過ぎてしまい、その結果

発熱が高くなり自然着火することで、デトネーション→ノッキングとなるわけです。

点火時期を進め過ぎるとノッキングするのはこうした理由です。

当然ながら、これは圧縮圧力の高いエンジン或いはターボ等では過給圧の高いエンジン

や吸気温度の高いエンジンほどリスクが高くなります。

 

ここまでで解ると思いますが、ノッキングを防ぐには「自然着火しにくい燃料を使用する」

ことが燃料側でできる対策になるわけです。

(もちろんエンジン側の設計、加工でできる機械的なアンチノック性の向上もあります)

逆に言うと、燃料のアンチノック性が高ければ、それだけ点火時期を進角させることが

できる、ターボの過給圧を上げることができる、圧縮比を高くすることができる…等の

エンジンのトルク、およびパワーアップへの設計、チューンの自由度が広がるわけです。

つまり、よく勘違いされている方もいますが、レギュラーガソリンで問題なく動くエンジン

にハイオクガソリンを入れただけでは何も変わりません。

エンジン自身をハイオクガソリンに最適化することで、はじめてその意味をなすものなのです。

 

●さて、ここからが私のいちばん言いたいことなのですが、よくハイオクガソリンの説明など

で目にする記述に「ハイオクは燃えにくい」などと書かれていることがありますが、これは

非常に誤解を生む書き方です。

ここでまず理解していただきたいのは「着火性」と「引火性」の違いです。

「着火性」というのは温度を次第に上げていったときに、燃料が自然着火することで、

低い温度で着火する燃料ほど「着火性が良い」といいます。

圧縮熱で着火させるディーゼルエンジンにはこの着火性の良さが求められます。

対して「引火性」というのは、たとえば燃料にマッチの火などの火種(プラグのスパーク

がこれに相当します)を近付けていったときに、どれだけ離れた距離で火がつくかを

指したもので、当然、その距離が遠いほど「引火性が良い」と言えます。

ガソリンエンジンはスパークプラグの火花によって点火しますので、わずかな火花でも確実

に引火、燃焼してくれないとならないのです。

つまり、ガソリンエンジンに求められる理想的な燃料とは「僅かなスパークで確実に燃焼を

し、逆にその他の要因では決して燃焼をはじめてはならない」ということで、言い替えると

「引火性が良く、着火性が悪い」燃料なのです。

この引火(発火)性能はハイオクもレギュラーも変わりません。 変わるのは前述しま

したように「温度による自然着火性」の差で、これのおかげでハイオクはノッキングが起き

にくくなっているわけで、「火のつきやすさ、燃えやすさ」そのものはハイオクもレギュラー

も同じです。

ですので、「ハイオクは燃えにくい」というのは素人に誤解を与える間違った記述です。

 

ただ、一部には「ハイオクよりレギュラーのほうが燃焼速度(火炎伝播速度)が速い」と

いうことを言う方もいます。 これが本当ならばノッキングが起きないことを前提のうえで

レギュラーガソリンを使用したほうが有利ということになりますが、理論的な裏付けがある

わけではないので、私にはなんとも言えません。

なお、火炎伝播速度が速ければそれだけ完全燃焼にかかる時間が短縮できますので、逆に

いえばそれだけ点火時期を遅らせることが可能になるわけです。

前述しましたようにプラグの点火は上死点前で点火しますので、ピストンが上死点までに

達する間はピストンを逆回転に押し下げようとする力となりパワーロスを生みますので、

本当ならば点火時期はできるだけ遅らせたほうが効率は良くなるわけです。

 

●日本車の場合、ハイオク仕様のエンジンでもたいていはレギュラーガソリンでも問題なく

動くようにはできていますが、外国車や国産車でも一部の車両、コンピューターチューン

などを施したクルマの場合は、ハイオクガソリンを使用しないと、最悪はエンジンを破損

する、場合によっては車両火災につながることもありますので、たとえ街乗り程度の軽い

負荷でノッキングが起きないからと言って(上でも書きましたようにノッキングというのは

必ずしも人間の耳に聞こえるものばかりではないのです。 「高速ノッキング」は非常に

微妙な音で耳に聞こえないことが多いので、とても危険です)レギュラーガソリンを使用

することは避けて、ハイオク使用が指定されている場合は素直にハイオクガソリンを使用

してください。 セーフティーマージンとして考えれば決して高いものではないと思います。

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