●ラム圧過給についてのひとこと
●レーシングカーなどではよく走行時の風圧を利用するためにインダクションポッド
を設けることがあります。 F1マシンのてっぺんについているあの穴です。
それで、市販の二輪車、また、一部の四輪車でも同様の効果を狙ってか、ラム圧(動圧)
を利用している車種も見受けられます。
また、社外のパーツでもそうしたラム圧を取り入れるエアロパーツもありますし、DIYで
そのように改造されている方もいると思います。
では、実際のところこのラム圧(動圧)利用の効果というのはどの程度あるのでしょうか。
●まず、エンジンの吸気系の順路を考えてみたいと思いますが、現在、エアフロメーター
でフラップタイプというのは抵抗が大きいためほとんど駆逐されていますので、吸気系で
もっとも抵抗物となっているのはもちろんエアクリーナー(エアフィルター)となります。
つまり、エアフィルターを境にダーティーサイド(フィルター前)の圧力が高く、クリーン
サイド(フィルター後)の圧力は低くなります。 この圧力差が即ち抵抗です。
つまり言い方を変えると、もしダーティサイドの圧力を大気圧以上に上げておけば、
フィルターを通過した後の圧力も上がり(負圧による抵抗が減る)、それだけ吸気抵抗の
低減=パワーアップに繋がるというわけです。 この役目をするのがラム圧(動圧)です。
つまりこれはターボやスーパーチャージャーが過給するのとは根本的に異なるものです。
ターボやスーパーチャージャーはエアフィルターを通過したあとの空気を圧縮し、言って
みれば大気圧を2倍にも2.5倍にもしているわけです。
それに対し、ラム圧(動圧)はあくまでもエアフィルター前の圧力を少しでも高めてやり、
エアフィルター通過後の圧力損失をできるだけ減らしてやろうという程度のものです。
よく「ラム圧過給」という言葉を耳にしますが、私は「過給」というのは言い過ぎで、
せいぜい「動圧利用」という程度がちょうどいいと思っています。
実際、上でも例に挙げたF1マシンでさえ、そのラム圧によるパワーアップ率は時速300km/h
でやっと5%いくかどうかというレベルだと聞いたことがあります。
もちろん、F1くらいのパワーのあるエンジンでは5%といえど35〜40PSもの差になり
ますから無視できないかなり大きな差になりますが。
しかし市販車の場合はどうでしょうか。 F1のように効率の良い位置にインテークがある
わけではありませんし、何より絶対速度が違い過ぎます。
たとえば空気抵抗は速度の二乗に比例して増えるものですので、逆に言うと、速度が半分に
なればその動圧効果は1/4にまで減ってしまうということになります。
つまり、たかだか100km/hや150km/h程度では「過給」と言うにはほど遠いほんの僅かな
圧力(だいたい0.005〜0.01kg/cm^2)程度の圧力しかかからないわけです。
ターボやスーパーチャージャーの過給圧は低いものでも0.5kg/cm^2、高いものになると
1.7kg/cm^2程度になりますから、ラム圧は桁違いに低いものなのです。
ですので、市販車で仮に元の馬力が200馬力であったとしますと、最大限、ラム圧効果が
稼げるようなエアインテークを設けても、150km/h〜200km/h程度の速度におけるラム圧
(動圧)による馬力アップ効果はせいぜい2〜3馬力程度が精一杯というわけです。
これだけではとても体感できるほどの数値にはなりません。
純正で300km/h出る200馬力クラスのリッターバイクでも、仮に300km/hまで速度を
出してもエアインテークの効率的に考えてF1レベルの5%には及ばないでしょうから、
ラム圧で10馬力上げることはまず不可能でしょう。
もっとも、この差を「僅かな」と捉えるか「大きな差」と捉えるかは考え方次第ですが。
このようなことから、私はラム圧(動圧)は「よりパワーを上げるため」というよりも
「少しでもエアフィルターによる吸気抵抗を少なくするため」程度に考えたほうがいいと
思っています。
●しかしながら、決してラム圧(動圧)を無視しようと考えているわけではありません。
吸気抵抗は少ないほうが良いことは間違いないわけですし、実際、自動車やバイクメーカー
もわざわざそうした僅かな効果を狙ってそういったインテークをつけているわけです。
ただ、これはどちらかというと、その絶対圧を馬力に活かそうとするよりも、より温度の
低い空気を効率良く取り入れるための効果のほうが大きいのではないかと思います。
また、見落としてはいけない点としてはラム圧の効率のほうばかりに気をとられると走行時
の空気抵抗が増してしまうというトレードオフが生じることに気をつけないといけません。
ラム圧(動圧)がかかるということはそれだけ空気抵抗が増えるということになりますので
いくらラム圧をかけて馬力が上がっても空気抵抗がそれを上回って増えてしまったら本末転倒
です。 たとえば、ラム圧によって馬力が10馬力上がったとしても空気抵抗の増加で15馬力
ロスしてしまったらまったく意味がないということになってしまうのですから、ラムエア方式
もよく考えておこなわないとかえって「逆効果」になってしまうというわけです。
また雨天の走行時に雨水がエアフィルターを濡らさないような対策も必要になってきます。
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