●クランクやピストンの重量バランスについてのひとこと
●よくエンジンをオーバーホールしたついでにクランクシャフトのダイナミックバランス
(動バランス)やピストン、コンロッドの重量合わせをすることがありますね。
もちろん、回転部分、往復運動部分等の複数あるパーツはすべて質量が揃っていることが
理想ですので、それはそれで意味のあることだと思います。
しかしながら、いくらチューニングとは言ってもそれにかかる費用対効果という意味では
むやみにおこなって効果が出るかどうかという点ではやや疑問な場合も多いです。
たとえば、もっとも多い直列エンジンの場合で書きますと、まずクランクシャフトが
フルカウンター(すべてのクランクアームにウェイトがついている)であるか否かで
ダイナミックバランスやピストンやコンロッドの重量合わせの効果が出るかどうかが違って
くるのです。
まずダイナミックバランスについてですが、これはクランクシャフト全体での動バランスを
見るものですので、各スロー(各シリンダー)ごとのバランスを取っているわけではありま
せんので、当然ながらフルカウンターでないクランクの場合はウェイトのついてないスロー
ではとくに大きなアンバランスが残ります。 このウエイトのついてないスローではピストン
やコンロッドがつくとさらにそのアンバランスが大きくなりますが、これはクランクシャフト
が回転中に「暴れる」ことに繋がりますので、どうしても振動や騒音(酷い場合はメタルの
片当たりや叩き音が出る、最悪の場合はメタルが焼き付く場合も)の原因になります。
とくに高回転になればなるほどそれは著しくなります。 しかしフルカウンターのクランク
シャフトではそのバランス率(ピストン/コンロッドの質量に対してのカウンターウエイトの
質量とのバランス)にもよりますが、それが最小限となりますので高回転になってもクランク
が暴れることが少なくなりますので、回転も滑らかになります。 つまり、フルカウンターで
ないクランクの場合はダイナミックバランスを取ることでクランク全体ではバランスが取れて
いても、各スローごとで見るとかなりのアンバランスが残ったままですので、バランス取りの
効果があらわれにくく、いくらバランスを取っても根本的な振動は消えないことが多いという
ことです。
次に、ピストンやコンロッドの重量合わせについてですが、これもクランクシャフトがフル
カウンターの場合でないと効果が薄いです。
と言うのも、ピストンやコンロッドの質量というのはクランクの回転中にその対向にある
カウンターウエイトの質量とのバランスを取ることに意味がありますので、フルカウンターで
ないクランクでのウエイトのついてないスローではバランスの取りようがないのです。
(ここでいうカウンターウエイトとのバランスというのはいわゆるバランス率という意味では
なく、ピストン/コンロッドとカウンターウエイトを合わせた各シリンダーごとの重量の
バラツキという意味です)
つまり、カウンターウエイトの質量がバラバラなのにピストンやコンロッドの質量だけを精密
に重量合わせしたところで何の意味もありません。
もちろん、クランクシャフト全体で見ればトータルでの「辻褄合わせ」にはなるのですが、
チューニングの場合はやはり各スローごとにバランスが取れていることが重要になってきます。
フルカウンターのクランクだからこそ、そのウエイトの対向にあるピストン/コンロッドと
の重量バランスを取る効果が活きてくるのです。
要するに、クランクシャフト、ピストン、コンロッドはエンジン回転中はそれらがすべて一体
となって作用しあっているわけですので、その一部だけを見て考えるのではなく、すべてを
トータルで考えないと意味がないということなのです。
最近のエンジンは純正でも精度が上がっていますので、たとえばピストンでも±1グラム程度
の範囲には収まっていることが多いので、フルカウンターでないクランクの場合はとくに精密
な重量合わせをする必要も意味もないと私は考えます。
ただ、古いエンジンや精度の悪いエンジンでピストンやコンロッドの重量が3gも5gもバラつい
ているような場合はある程度は取り直すか、あるいは複数の中からバラツキの少ない個体を
選ぶなどしたほうがいいでしょう。
なお、この「複数のピストンからバラツキの少ない個体を選ぶ」際に、通常は「軽いものに
合わせて選ぶ」というのが常識なのでしょうが、NAエンジンならそれでも良いと思いますが、
私はより熱負荷、燃焼圧力負荷の大きいターボエンジンの場合はむしろ「重いもの合わせて
選ぶ」ほうが良いと考えます。
これは、鋳造にせよ鍛造にせよ、同じ型で作っているわけですから、重いということはそれ
だけ「中身が詰まっている」と言えるわけで、それだけ強度的に余裕があるという考えから
です。 逆に軽いということはそれだけ内部に微細な空洞(鋳物の鬆=気泡など)があると
も考えられ、強度的には不利な場合もあるということです。
なので、強度を優先する場合はむしろ重い個体に合わせるというのもアリかと思います。
なお、これまで述べたことはすべて直列エンジンの場合です。 V型エンジンや水平対向
エンジンの場合は話が違ってきます。 V型や水平対向の場合はそのシリンダーと対向する
シリンダーのピストンとコンロッドが互いにウエイトの一部として作用しあいますから、
クランクシャフトのウエイトの有無とは関係なく重量合わせをする意味があります。
とくに水平対向エンジンでは対向するピストン/コンロッドの質量がそのままつり合い錘と
して作用しますので、重量合わせの効果が顕著にあらわれると思います。 この場合、とくに
コンロッドは回転運動部分と往復運動部分にまたがり複雑な慣性が生じますので、大端部、
小端部の質量のバランスも合わせて取ると効果が高いでしょう。
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