●クランクケース内圧バルブについてのひとこと

●だいぶ前から2輪の分野で流行りはじめている「内圧コントロールバルブ」というものが

最近になって4輪の分野でも流行りはじめています。

内圧コントロールバルブとかクランクデコンプバルブとかレデューサーとかNAGバルブとか

商品名はいろいろですしスライドバルブ式やリードバルブ式など構造に違いはありますが

どれも基本的な考え方や作動原理は同じです。

このバルブは、クランクケース内の圧力を下げることでピストンの上下動やクランク

シャフトの回転時の「空気抵抗」を低減してパワーロスを抑えようとするものです。

その考え自体は間違っていないのですが、とくに最近の4輪エンジンの場合はこのバルブ

をつけることでデメリットが生じることもよく考えてもらいたくて今回は書きます。

(この手のバルブを売っているメーカーではメリットは説明してもこうしたデメリットは

隠しているケースが目につきますので)

 

●近年の4輪エンジンのブローバイコントロールシステムは「クローズドタイプ」と呼ばれる

ものがほとんどで、PCVバルブというオリフィス兼ワンウェイバルブを装備しています。

このバルブはインテークマニホールド内の負圧が強いときにはこのバルブを通してエンジン

内のブローバイガスを吸込み、さらにブローバイホースからはエアクリーナーを通過した

綺麗な空気をクランクケース内に取り込んでエンジン内部を「換気」することでエンジン内

の清浄とエンジンオイルの劣化を防いでいます。(最近のエンジンのエンジンオイル交換

サイクルが非常に長くなってきているのもこのPCVバルブによる換気効果のおかげです)

しかし、「クランクケース内圧コントロールバルブ」を装着すると、このPCVバルブとは逆

方向のワンウェイになるため、このPCVバルブの機能が殺されてしまいますので、クランク

ケース内の換気ができなくなってしまうのです。

このことにより、エンジンオイルの劣化が急速に進むため、この内圧コントロールバルブの

類をつけた場合は、メーカー指定のオイル交換サイクルよりもずっと早くオイル交換をする

必要がありますのでご注意ください。(このことを説明していないメーカーが非常に多い)

この内圧コントロールバルブの機能説明には「燃費の向上」を謳っているケースも多いですが

仮に百歩譲って燃費が僅かに良くなったとしても、オイル交換サイクルが本来の1/2〜1/3に

短くなってしまったら結局は経費がかかりコストアップにしかならないということになります。

賢明なユーザーさんはこのへんのことをよく考え、メーカーに騙されないようにしましょう。

 

●ただ、正直言うとブローバイを大気開放にせずにサクションに戻している場合は、この

内圧コントロールバルブをつけてもとくに高回転時にはあまりメリットはありません。

と言うのも、ほんとにクランクケース内圧を下げたいときというのは全開走行時などエンジン

が過酷な状況で使われているときですが、この状態のときはサクションパイプに生じる負圧に

よってすでに強力にクランクケース内部は負圧になっていますので、ここにバルブを挟むこと

はいくらワンウェイであったとしても無駄な抵抗にしかならないのです。

実際、私が自分の車で測ったときは、全開走行時、サクションパイプ内の負圧は-500mmHg

以上の強力なバキュームが常時作用しており、内圧コントロールバルブなどなくても充分な

吸引がなされていることを確認しています。

ですので、私個人の考えでは少なくとも純正のブローバイシステム(クローズドタイプ)を

活かした状態においてはこの内圧コントロールバルブの意味はないです。

内圧コントロールバルブはブローバイシステムからPCVバルブを外し、かつ大気開放、つまり

オープンタイプにしてはじめて活きるものでしょう。

また、もし仮にクランクケース内圧を下げすぎた場合にはオイルシール類からの水やダストの

侵入など弊害もありますので、いたずらに内圧を下げ過ぎるのも良くありません。

ちなみに、メーカー純正状態ではクローズドタイプの場合のクランクケース内圧はだいたい

-4mmHg(-0.005kg/cm^2)〜2mmHg(0.0025kg/cm^2)程度の範囲になるように設計され

ているとのことです。

というのも一般的なウェットサンプエンジンの場合、あまり減圧しすぎてクランクケース内部

が真空状態に近くなってしまうと、オイルパンに溜めてあるオイルをオイルポンプが吸込みに

くくなってしまい、オイルラインにエア噛みしてしまったりして潤滑不良を起こす危険性が

あるためです。 ですので、基本的にウエットサンプエンジンの場合はいくら減圧するとは

いっても大気圧より若干の負圧程度に留めておくのが無難なのです。

ちなみに、レーシングカーで多いドライサンプのエンジンではこうした心配はありませんので

オイル回収用のスキャベンジングポンプが強力で、オイルとともに内部のブローバイガスも回収

して強力にクランクケース内部を負圧にしています(だいたい-76mmHg(-0.1kg/cm^2)程度)

これはレーシングカーですので1馬力もロスをさせたくないという目的がありますので。

 

●もしこのバルブが大きく効果を発揮するとしたら、2輪車で多いような単気筒エンジンや2気筒

エンジンなどクランクケース容積が大きく変動するエンジン(ですがこの手のエンジンには純正

ですでにそういうバルブが備わっていることが少なくありません)で、なおかつPCVバルブを

もたないシールドタイプかオープンタイプのブローバイシステムのエンジンになると思います。

 

ちなみによくこのバルブをつけて「エンジンブレーキが弱くなる=走行時のポンピングロス

も減る」と書かれていることがありますが、これは大きな間違いです。

シールドタイプおよびクローズドタイプの場合、エンジンブレーキ時は当然スロットルバルブ

を閉じているわけですのでサクションパイプには負圧は作用しません。 ですのでクランク

ケース内圧は下がりませんのでエンジンブレーキがかかるのは当然です。

しかし、本当にクランクケース内圧を下げたい時というのはエンジンブレーキ時ではなく、

前述しましたように全開時、とくに高回転時です。 このときにはサクションパイプの負圧

が充分発達しておりますので上記でも書きましたようにこのようなバルブがなくても自然と

クランクケース内の圧力は吸われ、負圧になるのです。

つまり、エンジンブレーキ時と全開運転時ではブローバイホース内の負圧の発生状況が異な

りますのでエンジンブレーキが弱くなったことがイコール走行時のポンピングロスが減った

ということにはならないことをよく考えてください。

ただ、街乗りとかのサクション負圧が充分に発達していない走行条件で走るときなどは多少

なりともこのバルブの効果はありますので、なんとかPCVバルブとの共存ができるように、

つまりクランクケース内の清浄作用を活かしたまま必要に応じてこのバルブの効果が出るよ

うな仕組みにすればパーフェクトだと思います。

 

●追記 クランクケース減圧バルブの実際に起きた弊害について

とあるチューニングショップで実際にあった話なのですが、この減圧バルブをつけてしばらく

経った頃、エンジンをかけたとたんにオイルレベルゲージが吹き飛んだり、走り出してブースト

がかかった際にオイルシールが吹き抜けたりしたことが数件あったとの報告を聞きました。

調べてみたら、原因は減圧バルブの「凍結」にありました。

つまりブロイーバイガスには水分が含まれますので、この水分がバルブについたままエンジン

を止め、そのまま一晩おいておいたら凍り付き、その状態でエンジンをかけたためにバルブが

開かず、ブローバイガスの抜け道がなくなってしまったためにクランクケース内圧が上がり

過ぎて上記のようなトラブルが出たというわけです。

実際にこのようなトラブルが出ていますので、この類の減圧バルブをつける方は、冬期の凍結

には注意する必要があると思います。

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