●ステンレススチールについてのひとこと
「錆びない鋼」として有名なステンレスですが、実際には「錆びにくい鋼」というのが正しいでしょう。
ステンレスの定義はクローム(Cr)を12%以上含んだもので、このクロームの酸化膜が表面を覆う
ことによって、内部への酸化=錆びの進行を防止しているのです。その為にはクロームは最低12%
は必要ですね。 一般的には13%、18%のものがあり、さらに強固な酸化膜を形成するために
ニッケル(Ni)を含んだものもあります。
さらに炭素(C)の含有量が低いことも重要です。 炭素は酸素と結びつきやすい性質を持つため、
いくらクロームの含有量が多くても、炭素分が多いと錆びやすくなってしまうのです。 ただし、炭素
は鋼を強く、硬くするのには欠かせない…というよりはこれがあるから鋼と呼ばれるゆえんなので、
錆びにくさを優先して炭素分を落とすと鋼材は弱くなってしまいます。逆に炭素分を多くすると錆びや
すくはなりますが強く硬くなります。 このへんが矛盾してしまうポイントですね。
また熱処理(焼き入れ)を行う場合には最低でも0.3%以上の炭素が必要です。
そのステンレスですが、非常にたくさんの種類があるため、代表的な種別の分けて簡単に説明します。
まず、ステンレスの表記は一般にSUSと書き、そのあとに3桁の数字と1、2つのアルファベット
で表します。 ステンレスにはその組織構造別に以下のように大別します。
●オーステナイト系ステンレス
これは皆さんが一般的な生活でもっとも触れる機会の多い代表的なステンレスで、18−8
(エイティーンエイト)とも呼ばれる18%クローム+8%ニッケルのSUS304、SUS303
等が有名です。色はニッケルが入っているため若干薄金色がかっていまして、高級感があります。
錆びにくさを優先させるため、炭素は0.08%以下に抑えてありますので硬くなりません。
家庭用での使用用途では食器、水廻り一般、ありとあらゆるところで使われます。 また機械部品、
特に食品加工機械ではよく使います。
オーステナイト組織構造のため磁石につきません。 また炭素量が極端に少ないので柔らかいです。
この系統では他に、SUS316という耐酸、耐薬品性を高めたものもあります。
また、303L、304L、316Lというさらに低炭素(0.03%以下)にして耐蝕性を
高めたものもあります。
●フェライト系ステンレス
これはあんまり馴染みがない系統かも知れません。18%クローム系でして、フェライト構造の組織
のため磁石につきますし、色も通常の鋼材とかわらないため、見た目での判別は難しいです。
これはどちらかというと廉価版ステンレスとして考えてもらうといいかも知れません。耐蝕性、強度
ともにそれほど特徴もないので、ちょっと中途半端な感もあります。
代表材種はSUS410L、SUS430等です。
●オーステナイト・フェライト系ステンレス
これはほとんど使いません。 種別もSUS329シリーズのみです。
●マルテンサイト系ステンレス
ステンレス鋼中、最高の硬さをもつSUS440Cがある系統です。 ステンレス包丁等もこれを
使用しています。 440はクロームを13%に押さえたかわりに炭素を最高1%程度まで入れて
耐蝕性犠牲にしたかわりに硬さ、強さを優先させたものです。 なお、これも磁石につきます。
通常の炭素鋼同様、焼き入れによってHRc55〜60まで硬くすることが可能です。
代表鋼種はやはり440A/B/C、410、420です。 なお、バイクのブレーキディスクにも
使用される429J1もこの系統です。
蛇足ですが、よくステンレス包丁は通常の炭素鋼の包丁よりも切れが悪いと言われますが、これは
クロームの結晶が大きく粗いために、ミクロレベルで見た場合に表面がギザギザしているのが原因
です。対して通常の炭素鋼(一般にはSK材)は炭素の粒子が非常に細かいために滑らかなのです。
●析出硬化系ステンレス
これは硬さよりも強さを優先したステンレスで、まだ新しい鋼種です。 析出硬化とは、一般の炭素
鋼の焼き入れとは違い、含まれる合金成分を析出させることによって硬くする「固溶化処理、溶体化
処理」と呼ばれる処理をします。 ジュラルミンやベリリウム銅と似たような感じです。
これによって得られる強度はかなりのもので、引っ張り強さ100Kg/mm^2以上と、
マルテンサイト系と同等の強さとマルテンサイト系にはないじん性(粘り強さ)をもっていますので、
高強度機械部品には注目の材料です。
現在JISではSUS630、631シリーズがあります。
ステンレスを錆びさせないためには、下手にビニールやカバーで覆わないで、空気に直に触れさせる
ことが重要です。表面に酸化膜ができなければ防錆はできませんので。 それと、これはステンレス
に限ったことではないのですが、異種金属との長時間の接触も防がなければなりません。
お互いの金属の導電率の違いから電位差腐蝕を生じる可能性があるからです。
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