●鋳鉄および鋳鋼についてのひとこと

●フライホイールの記載でもちょっと触れましたが、鋳鉄材料についての簡単な分類および特徴に

ついて書きたいと思います。

 

●みなさんは鋳鉄と聞くと、まず「脆い」「弱い」というイメージがあるかと思います。

一般的によく使われる鋳鉄はねずみ鋳鉄と呼ばれ、片状黒鉛鋳鉄と呼ばれます。 JIS記号ではFCで

はじまる種類のもので、引っ張り強さによってFC25(FC250)、FC35(FC350)などがあります。

この数字は一般的な構造用鋼であるSS材と同様、1mm^2あたりの引っ張り強さを表わしたもので、

数字が大きくなるほど強いことを表わします。

ですが、たとえば数字の上ではほぼ同じ引っ張り強さのFC350とSS330が同じ強さを持っているか

というとそれはちょっと違います。

前述しましたように鋳鉄は「脆い」のです。 つまり靭性や延性がないので伸びがありません。

鋼材の場合はその弾性からまず伸びが生じ、それが降伏点を超えてから引っ張り強さに相当する値

で破断するというカーブを描きますが、鋳鉄の場合は伸ばそうとすると当然ながら一気に破壊して

しまいますので、これが鋼材との決定的な違いとなります。

この原因は鋳鉄に含まれる黒鉛の量と、その形状によるもので、「片状黒鉛鋳鉄」という名称の通り

黒鉛がガラスの破片のような形状で散乱しているため、応力の集中により破壊されやすいのです。

 

それで、これを解消したのが球状黒鉛鋳鉄、FCDです。 FCDのDはダクタイルのDで、別名、延性

鋳鉄、ダクタイル鋳鉄、ノジュラー鋳鉄とも呼ばれます。

これはその名の通り、片状であった黒鉛を球状にしたことで鋳鉄の宿命であった脆さを飛躍的に

向上させたもので、そのおかげでねずみ鋳鉄では測定不可能であった「伸び」も測定できるように

なりました。

この球状黒鉛鋳鉄には最高でFCD800のような引っ張り強さで80kg/mm^2を超えるという熱処理鋼

に匹敵する強さのものもあり、強度、耐久性を求められる鋳造品にはかなり選択肢が広がったことに

なります。

また、このことは単に破壊強度が上がっただけでなく、熱疲労にも強いので、たとえば一部の市販車

のタービンのエグゾーストハウジングにも使用されています。

 

蛇足ですが、私も過去にテストとしてFCD60(旧規格呼称)材を使用してGT-R用にブレーキローター

を削り出しで製作したことがありました。 カーボンローターのように外周からドリルで穴をあけて

ベンチレーテッドにして凝った造りにしましたが、利きはよかったものの、鳴きが酷く、結局街乗り

には適さなかったために使えなかったという苦い経験があります。

いろいろ試しましたが、利きを考えるとディスクローターに使用するにはやや軟らかめの材料のほう

が適していると思います。

 

●最近はこの片状黒鉛鋳鉄と球状黒鉛鋳鉄の中間とも言える、CV鋳鉄と呼ばれるものが普及してきて

います。 熱伝導性が良いこともあり、FCDよりも安価であることからブレーキローターに使用される

ことが多いようです。

ですが、ブレーキの利きについての差ははこれらの材種的な差というよりも、どのくらいの硬さの

材料を選択するかによって差が出ます。 つまりFCよりもFCDのほうが利きが良いとかはないのです。

たとえば通常のねずみ鋳鉄でもその種類によって利きの善し悪しはあります。

何より肝心なのは摩擦という現象は相手材との相性によることが重要ですので、ディスクだけを考え

たり、パッドだけを考えたりしては意味がありません。

もちろん、キャリパーやディスクの構造、剛性、精度が大きくかかわってきます。

 

●この他に可鍛鋳鉄(FCM)というのもあります。 文字だけから見るとまるで鍛造でもできるかの

ような名称ですが、実際はただ単に脆さを改良したものです。 ですが前述の球状黒鉛鋳鉄ほどの

強さ、伸びはありません。

 

ちなみに、鋳鉄の特徴のひとつとしてその内部組織から振動減衰性に優れるという特徴があります。

このことから測定装置や工作機械のフレームにも適しており、また、オーディオスピーカーのマウント

などにもよく使用されます。

 

●鋳鋼品

鋳鉄に対して、こちらは鋳鋼です。 しかも材料ではなく鋳鋼「品」です。 記号はSCです。

早い話が、一般に出回る鋼材は板や棒のかたちで成形されますが、これを最初から製品のかたちで

成形したものが鋳鋼品になるわけです。 つまりはじめから決まった製品になるので、素材として

は存在せず、必ず何かしらの製品のかたちになっています。

当然ながらその材質は製品により多種多様で、JISに規定されているもの以外にもその製品にあわ

せて数え切れないほどのものがあると思います。 耐熱鋼としてのステンレス鋳鋼(SCS)なども

あります。

もちろん、焼き入れや焼き戻し、その他熱処理も通常の鋼材と同様に可能です。 というよりも

それをするためにわざわざ鋳鋼を使用するわけです。

 

●型

ふつう、鋳造に使用する型は「砂型」を使用することが一般的です。

これはまず雄型になる実際の製品とほぼ同じ大きさの型を製作しますが、これは木で製作されること

が多く「木型」と呼ばれます。

この木型を砂に半分づつ埋め込むようにして上下2つにわけて造ったものが雌型となり、これが砂型

となります。

この後、木型を取り去り、上下の砂型をあわせてそこに鋳物用の銑鉄を溶かしたものを流し込みます。

それで冷えたあとに砂型を壊して鋳物を取り出すことになります。

ちなみに、上記の方法では、木型は砂型を分割して取り出す必要があるため、鋳造の形状に制限が

あります。 これに対して、雄型を木ではなく樹脂やロウで製作し、雄型を取り出すのに砂型を分割

することなく、溶かして取り出す方法があり、これだと複雑な形状のものも鋳造できます。

これはシェルモールドとか、ロストワックスと呼ばれる方法ですが、この方法はこの雄型を製作する

ために今度は金型が必要になることから、かなり大量生産でないと元が採れません。

ですが、とくにロストワックス法などは精密鋳造などにはよく使用されます。

 

ちなみにダイキャスト(ダイカスト)という製法もよく聞かれるかと思いますが、これは主にアルミ

や亜鉛合金などの低融点合金で使用される方法で、要はプラスチックの射出成形と似たような感じで

金型に圧力をかけて溶融した金属を流し込んで成形するものです。

この方法は、鋳造と鍛造の中間みたいなものと考えていただければいいかと思います。

 

ここでまた蛇足ですが、よくピストンやアルミホイールで「半鍛造」などという呼ばれ方をしている

場合がありますが、これは絶対に間違っています。 消費者を惑わせる良くない呼び方です。

もともと、アルミなどの鋳造は鋳鉄などと同様な砂型に流し込んでそのまま鋳造する場合よりも、

むしろダイキャストに近い工程で、圧力をかけて製造されるものが多く、こうしたものは分類上は鋳造

や鍛造と呼ばれていますが、実際にはその両方の長所を兼ね備えていることが多いです。

ちなみに、アルミ鋳物の場合はAC、アルミダイキャストの場合はADCという呼称になります。

 

余談です。 エンジンのクランクシャフトなどは鋳鋼品あるいは鍛鋼品ですが、とくに鍛鋼品の場合

通常は鍛造の型は上下2つの割型を使用し、何回かに分けて鍛造して成形します。

たとえば直列4気筒のエンジンのようにクランク角が180度のものであればそれでいいのですが、V型

エンジンや直列でも3気筒、6気筒といったクランクの場合はクランクアームの角度を考えればわかる

ように、上下2つの型だけでは成形できませんね。

それでどうやって成形しているのかと言いますと、簡単なことですが普通に上下2つの型で平面状に

成形したあとに、ねじってクランク角度をつけているのです。

もちろん、レーシングエンジンなどの場合は削り出しで製作するのが当然ですが、市販エンジンの

クランクはコストダウンのためにこうしたことで成形されていることが多いです。

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