●最近の省燃費エンジンについてのひとこと

●最近の車は安全性の向上や走行性能、とくに走りの質感向上のためにモノコック自体が

重くなっていること、また快適装備の充実などにより、モデルチェンジする度に全体に重量

が重くなる傾向にあり、また電装品なども多くなって電気的負荷も多くなってきてますので

昔に比べるとどうしても燃費という点では不利になりがちです。

 

それでもメーカーはさまざまな効率化による技術で燃費を良くする(というより燃費を悪化

させない)努力は続けていますので、少なくとも10・15モードの数値はさほど悪くなって

いません。

しかし、実用燃費との差となると残念ながら車種によってはこの10・15モード燃費との差が

あまりに大きい車があるのも事実です。

それではこの10・15モードの表記は信用できないのかというとそうではありません。 実の

ところはやはり運転の仕方がいちばん大きいのです。

昔、リーンバーンがもてはやされた時もそうなのですが、最近の様々な省燃費技術は「いかに

軽負荷、低負荷の領域で無駄な燃料を食わせないか」という部分で結果として燃費を稼いで

いるので、言い方は悪いですがバカみたいにアクセルを踏んでいるような運転のしかたでは

燃費は一向に向上しません。

現実に、車種にもよりますがきちんと考えて運転すれば、実燃費で10・15モードの数値を

マークすることは決して不可能なことではありません。

省燃費エンジンは「どんな状況でも燃費が良い」のではなく「無駄のない運転をしてはじめて

燃費が良くなる」ものなのです。 早い話、省燃費というのは猿が運転しても燃費が良くなる

というようなフールプルーフなものではないと言うことです。 ドライバーもいかにムダな

燃料を食わせないかきちんと考えて運転しなければなりません。

今回はそのあたりを書いてみたいと思います。

 

●まず、これは単純な話ですが、たとえばスタートダッシュで全開加速をしたときや追い越し

加速のときなど、仮に100馬力のパワーを必要とするとき(言い方を変えれば100馬力ぶんの

仕事をしたとき)当然ながら100馬力ぶんのエネルギー源、つまり燃料を必要とします。

これは昔のエンジンであろうが現在のエンジンであろうが同じです。 (もちろん、現在の

エンジンのほうが燃焼効率の向上や摩擦損失、冷却損失等が少ないのでまったく同じでは

ありませんが、一定量の燃料から取りだせるエネルギー量という意味では同じです)

ですので、こういったシーンでの燃費は現在のエンジンであってもあまり期待はできません。

しかし、日常で車を運転しているときはアクセルを全開にしている時間というのはそうそう

あるものではなく、殆どはアクセル開度は半分以下、トルクに余裕のあるエンジンであれば

ほとんどペダルに足を乗せているだけのような状態で運転していると思います。

つまり、実用域ではそれだけ軽負荷で運転している状態が多いわけで、こういった領域で

徹底的に無駄をなくして燃費を向上させようというのが現在の省燃費エンジンの技術です。

以前は省燃費エンジンというと、燃費と引き換えにパワーがないというイメージが多かった

と思います。 しかし最近のエンジンは「高出力、大トルクなのに燃費が良い」というものが

多くなっています。

これは上でも書きましたように、大きな出力(=仕事量)を必要とするときにはそれ相応の

燃料を消費しますが、それ以外の部分で無駄に燃料を食わせない工夫がなされているという

ことです。

 

いくつか例を挙げます。

 

たとえば、平地をほぼ一定速度で巡航しているときやアイドリング時などはエンジンには

僅かな負荷しかかかっておらず、それだけ少ない出力しか必要としていません。

ですのでこういった状態ではその出力ぶんの最低限の燃料だけ与えれば無駄な燃料消費は

抑えられることになります。 しかしここで問題が生じます。

単純に燃料を少なくすれば、いわゆるリーンバーン状態になります。  しかしだからと

いってあまり薄い状態で使用するとNOxが多く発生し、また触媒の効率も下がるので排ガス

の浄化効率が悪化します。 それに以前のリーンバーンエンジンあるいは第2世代のガソリン

直噴エンジンでも問題になったように、燃焼が不安定になることからPM、いわゆるススの

発生やそれが原因でエンジン内部や排気系統の汚れが蓄積し、数万キロも走ると黒煙を吐く

ようなエンジンになってしまいます。

仮に燃費が良くなったとしても排ガスが汚くなってしまったら意味がありません。

ですので、最近は軽負荷時にも過去のリーンバーンのような40:1とかの極端な希釈空燃比に

よる運転は控えられるようになり、代わりに取り込む混合気の量そのものを減らす、即ち、

実際にシリンダー内で燃焼させる排気量そのものを小さくしたのと同じにすることで無駄な

燃料消費を減らす方法が取られています。

 

その方法で代表的なもののひとつとして、いわゆるミラーサイクル運転があります。

これは単純にバルブタイミングをコントロールするもので、通常のエンジンでも吸気バルブは

圧縮行程に入ってもしばらくは吸気慣性を活かすために開いていますが、ミラーサイクルでは

それよりもさらに吸気バルブを遅くまで開けておき、吸込んだ吸気の一部を追い出すことで

実質的にシリンダーに取り込む空気の量を減らし、なおかつ圧縮圧力も下げることで擬似的に

排気量が減ったのと同じ効果と、コンプレッションロスを減らすことで軽負荷時の無駄な燃料

消費を抑えることが可能です。

これはアクセルをわずかに踏み込む程度の軽い速度調整程度の走行時や、高速道路での巡航時

には大きな省燃費効果を発揮します。

ただ、昔はミラーサイクルというとそのぶん出力はかなり犠牲になったものですが、現在は

VVTから進化した機構でバルブタイミング/リフトがかなり自由にコントロールできますので

それを利用することで、たとえばアクセルを踏み込んで急加速するときなどはバルブタイミング

を通常モードに戻すことでミラーサイクルモードから脱し、排気量すべてを使ってフルパワー

運転をすることができますので、この「通常モード」と「ミラーサイクルモード」を運転状況

に応じてきめ細かくコントロールすることで、加速時などに必要な出力を犠牲にすることなく

省燃費運転も両立できるということを可能にしたわけです。

これはさらに直噴と組み合わせればもっときめ細かい燃費およびエミッションコントロールが

可能になります。

 

もうひとつはターボやスーパーチャージャーなどの過給機をうまく利用した方法です。

これの代表的なものはVWのTSIですが、要するにエンジン本体の排気量は小さくしておき、

軽負荷時には単純に排気量の小さなエンジンと同等の燃料消費としておきながら、パワーの

必要な場面では過給をおこない、高密度の空気を送り込んで実質的に排気量の大きなエンジン

と同等のトルクを発生させようというものです。

もちろんこの考え方は以前からありましたが、ご存知のようにターボをはじめとする過給機

つきエンジンの場合、加速時などフルパワーを必要とするときは、ノッキングを防ぐためと

燃焼温度や排気温度の過度な上昇を抑えるため、NAエンジンよりもはるかに濃い空燃比を

必要としたために、同じ出力であればNAに比べて無駄に燃料を消費し、また排ガスも汚い

ものになってしまうという欠点がありました。

そのため、とくに2000年以降、ターボエンジンは一時的に減ってきておりましたが、ここに

きてまた復活の兆しが見えているのは、各種エミッション技術の向上により排ガスの浄化性能

の向上、およびエキマニなどの排気系の耐熱性向上などによる高い排気温度への耐性の向上

などの技術によるものですが、とくに注目すべきは直噴技術の進化によるものです。

先の例で挙げたVWのTSIをはじめ、マツダのDISIターボ、BMWの直噴ターボなどもその根幹

となるのはこの直噴あってのものです。 直噴にすることにより燃料噴射のタイミングや量が

吸気バルブの制約から開放されることからノッキングのコントロールが容易になり(極端な

話になりますが、ディーゼルエンジンのように空気だけを圧縮しガソリン噴射のタイミングを

ギリギリまで遅らせればかなりノッキングの危険を回避できます)そのぶん圧縮比もそう落と

すことなく過給できるので、従来のターボエンジンでは苦手であった過給のまだ充分に立ち上

がらない低回転域でのトルクが大幅に向上し、さらにムダに濃い空燃比にする必要がないため

燃費やエミッション性能も向上と、とりあえず理屈の上では従来のポート噴射では得られない

多数のメリットが考えられます。

 

ガソリン直噴と聞くと過去のGDIやD-4の例であったように音が五月蝿い、よくエンストする、

言うほど燃費が良くない、黒煙を吐く… など正直あまりいい印象がない方も多いかもしれ

ませんが、これらは第2世代の直噴エンジンで、上でもちょっと触れてますがいわゆるリーン

バーンによって燃費を向上させるために成層燃焼(燃料と空気を均一に混合せず部分的に濃く

することで着火し、他の薄い部分に燃え広がらせる燃焼形態)を重視したため、この極端に

希釈な空燃比の領域で不完全燃焼を起こすことから、ススの発生やミスファイヤによるエンスト

などの各トラブルに繋がったものです。

しかし現在の直噴エンジンはすべて第3世代の直噴となっており、この成層燃焼領域は使わず、

均質燃焼に特化しておりますので、過去の直噴エンジンのようなことはまずないと言って

いいと思います。

実際、第2世代の直噴エンジンではピストン頂部の形状が複雑で、副燃焼室っぽい形状を形成

するような形になっておりましたが、現在の第3世代の直噴エンジンのピストン頂部はごく普通

のポート噴射のエンジンとほとんど変わらない形状となっています。

このことからも成層燃焼ではなく均質燃焼をメインしていることがわかります。

とは言え、第3世代の直噴もまだ出てきて年月は浅いですので、今後、走行距離の伸びてくる

車が多くなるとインジェクタ関係の耐久性の問題や、カーボンの堆積などによる性能の劣化が

どういうかたちでデメリットとして出てくるかということについてはまだ不透明です。

トヨタ(レクサス)などはこの直噴とポート噴射の両方を使用することでそれぞれのメリット

を引き出すようなエンジンもありますが、このことは逆に言うと直噴だけではまだ長期的な

検証等が不十分で現段階では過渡期の技術であるとも言えるのではないかとも思います。

 

●なお、日本の燃費表記は従来の10・15モードから次第にJC08モードに切り替わっていきます。

JC08モードは10・15モードよりより長い距離で試験するとともに、コールドスタート状態からの

燃費も見ますので、空燃比がまだ濃い状態から試験するために、同じ車両であればJC08モード

のほうが数値は悪くなります。

現在JC08モードでカタログ表示されているプリウスの場合では10・15モードで35.5km/lだった

ものがJC08モードでは29.6km/lとなっていますので、単純に考えて2割前後落ちるものと見て

いいと思います。

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