●スパッタリングメッキとメッキ塗装との違いについて
●問い合わせの際によく「メッキ塗装をお願いします」というメールをいただきます。
また、業者様などからも「メッキ塗装は耐久性に問題がありますよね?」という質問もよく
いただきます。 このように当方でおこなっているスパッタリングメッキとメッキ塗装を同一
に考えておられる方がけっこう多いのです。
とくに、過去にメッキ塗装をおこなった経験のある方は「変色する」「メッキが剥がれやすい」
などの経験がある方が多く「メッキ塗装」には良いイメージを持たれない方も多いです。
これらはメッキ塗装特有の現象であり、当方でおこなっているスパッタリングメッキというのは
このメッキ塗装とは基本的に異なり、メッキ方法もメッキに使用する金属も違います。
スパッタリングメッキは反射層に「アルミニウム」を使いますが、メッキ塗装では「銀」を
使っています。 純粋に金属としての光の反射としてはアルミより銀のほうが若干優れては
いますが、アルミが比較的大気に対して安定しているのに対して、銀は非常に腐蝕しやすい
ため、後述するように表面のトップコートクリアーをぶ厚く吹く必要があるため、結果として
表面の透明度が落ちてメッキの反射が悪化するので、総合的に見るとスパッタリングメッキの
ほうが輝きに優れます。 これは自動車メーカーがライトのリフレクターのメッキにアルミの
スパッタリングメッキを採用していることからもわかると思います。
結論から言いますと、一般的なメッキ塗装に比べると当方でおこなうスパッタリングのほうが
輝き、耐久性、密着性などに於いては数段優れています。 これら「スパッタリングメッキ」と
「メッキ塗装」の違いについてこのページでは説明いたします。
●メッキ塗装というのは別名を銀鏡メッキともいい、銀鏡反応という一種の還元反応を利用した
方法で、要はガラス鏡の製造工程で使用される方法と同じものです。 水を使うので水性メッキ
などと呼ばれているものもこれと同じです。
このメッキは、鏡の場合はガラス板の裏側からメッキしますので、表面は厚いガラス面で保護
されていますので、問題はないわけです。
ですが、これを車やバイクの外装パーツに使用する場合は当然裏側からはおこなえませんので、
表側から同様の銀鏡反応によってメッキ面を生成するのですが、ここでまずスパッタリングとの
大きな違いが生じます。
スパッタリングの場合は、下地面全体にメッキ層が「接着」されますので、基本的に全面に密着
力が生まれますので剥がれにくいのですが、メッキ塗装の場合は全面に接着されませんので、
言ってみれば表面にメッキ層がただ「乗っているだけ」「浮いているだけ」なのです。
つまり、メッキ塗装はメッキ層が表面にほとんど接着されていないので、たとえば端のほうが
ちょっと剥がれると、まさに皮が向けるようにペラペラと剥がれてしまうのです。
一例ですが、メッキ塗装でメッキしたフロントグリルなどは、洗車場で使う高圧洗浄機で水を
強く当てただけでペラペラと剥がれてしまったケースも多々あるくらいです。
では、メッキ塗装の場合はどうやってメッキ層を固定させているのかと言いますと、基本的に
その表面を保護するためにおこなうクリアー塗装によって押えつけているだけなのです。
これでは剥がれやすくて当然です。(もちろん、業者によっても技術、程度に差はありますが)
ですのでよくメッキ塗装では「当社では何層にもおよぶクリアーを塗り重ねています」とか
書かれている宣伝も見ますが、これは結局のところそれだけ厚くクリアーを吹かないとメッキ
が剥がれてしまうために仕方なく何層にもクリアーをかけているのです。(それと同時に腐蝕
しやすい銀の保護をする意味もあります) しかし、それでも「メッキ塗装は剥がれやすい」
という根本的特性は消しようがありません。 しかもクリアー層を厚くすればするほどメッキ
の輝きが低下していきますので見た目も悪くなります。これは前述した通りです。
●さらに、メッキ塗装の場合は早ければ数カ月でメッキの色が黄色っぽく変色(黄変)したり
焼けたような褐色になってきてしまうこともあります。 このへんの耐久性もスパッタリング
に比べてかなり劣ります。
「黒っぽいメッキと指定したのに、赤っぽい、茶色っぽい、紫っぽい色になってきた」という
のもメッキ塗装特有の変色によっておこる現象です。
メッキ塗装はメッキ直後はちゃんとした色が出ていても、お客様の元に届く数日の間にさえ
変色してしまうことがあります。 これらはすべて「銀の腐蝕」によっておこる現象です。
なぜメッキ塗装はここまで耐久性がないのかと言いますと、上記で書いた鏡の場合は、表面は
厚いガラスで保護されますし、裏側は「犠牲防蝕」をおこなう銅メッキで保護したうえさらに
樹脂塗装で2重に保護しますので、空気中の水分やとくに銀の大敵である硫黄分から守られます
ので、長期に渡って輝きを持続できます。
ですが、クルマやバイクの外装パーツにメッキ塗装を使用する場合は、裏側はガラスに比べて
密度が低く柔軟性のある樹脂ですし、表面はただ単に薄いクリアーで保護されているだけです
のでメッキ層の銀が硫化されて変色したり、このクリアーがちょっと傷ついたりするだけでも
簡単にメッキ層が侵されてしまうわけです。 これは銀でできた食器がすぐに黒ずんでくる
ことからもわかると思います。 銀は非常に腐蝕に弱い金属なのです。
ですので車やバイクの外装部品にメッキする場合は、耐久性の面から言うとメッキ塗装は決して
向いているとは言えず、スパッタリングメッキのほうが耐久性、耐候性においては有利です。
ただし、スパッタリングに使用するアルミも水分によって長期的には腐食し「透明化」していく
ことがありますので、たとえば走行中の飛び石などで表面のクリアーが剥がれた場合は市販の
タッチアップペイント(クリアー)などでなるべく早く補修をお願いいたします。
↑これは他の業者様でおこなった「メッキ塗装」部品で、見ての通り黒っぽく焼けた
ような色をしていますが、はじめからこの色だったわけではなく、メッキ直後は普通の
クロームメッキ色だったものです。 それが数カ月のうちに銀が硫化変色してこんなに
真っ黒になってしまったのです。 もちろん、世の中のすべてのメッキ塗装がここまで
酷いわけではありませんが一例として載せておきます。 なお、スパッタリングメッキ
ではこうなることはまずありません。
●このような理由から当方では樹脂パーツ(ABS、PP、PC、アクリル等…、FRP、CFRPなど
が多いです)へのメッキはメッキ塗装ではなく、より品質に優れるスパッタリングメッキによる
メッキを主流にしております。
これまでメッキ塗装に対してスパッタリングメッキの優位性について書かせていただきました
が、これはあくまでもメッキ塗装に対してのメリットであって、たとえばメーカー純正のメッキ
や塗装などと比べるとスパッタリングメッキも品質的に決して満足いくものではありません。
やはり品質で言うとメーカー純正部品には及ばないのが現実です。 このあたりはよくご理解
のほどよろしくお願いいたします。
●最後に、スパッタリングに対してメッキ塗装のメリットも書いておこうと思います。
まずは、メッキ塗装は特殊な装置などが必要なく、低価格で設備が購入できることと、作業
するのに塗装ブースと同様の場所さえあれば作業できるので、ワーク大きさに制限がないという
ことです。 なので塗装業者さんであれば比較的少額の投資で手軽にはじめられるのです。
スペースさえあれば、自動車1台をまるごとメッキすることができるのがメッキ塗装です。
ですのでよくカーショウなどでは全メッキしたデモカーを見ることもよくあります。
対してスパッタリングの場合は専用の密閉された設備が必要なため、それによって大きさが
制限されてしまうということと、設備が数千万円単位でかかるという難点があります。
↑スパッタリングメッキの処理容器。
当方の場合で言うと、直径が500mmちょっと、高さが1400mm程度(実際には長さは1200
mm程度までで、それ以上だと両端部にメッキがつかない部分ができることがあります)の
ドラム缶のような形状になりますので、この中に入ってなおかつ回転させることができるもの
である必要があるのです。 具体的に言うと、ホイールサイズでいうと20インチまで、バンパー
やグリルなどは、通常は1200mm、めいっぱいで1300mm(ただし1200mmを超えると両端
にメッキのつかない部分ができることがあります)の長さまでということになります。
※現在は長さ1700mmのものまでスパッタリング可能になりました。
次にメッキ塗装の有利な点として、品物の形状に左右されにくいということが挙げられます。
スパッタリングメッキは基本的に特定方向からのメッキ照射であるため、たとえば表裏のある
形状の部品は基本的に表側だけの光沢処理となりますが、メッキ塗装は塗装と同様のスプレー
ガンによる手作業のため、品物全面360度に渡って均一な光沢処理が可能なことです。 また、
スパッタリングメッキはたとえば深い部分や狭い奥のほうまでメッキが届きにくい場合もあり
ますがメッキ塗装の場合はわりと奥のほうまでメッキをつけやすいというのがあります。
ただし、これも塗装と同様に最終的にはその作業者の腕次第と言えますので注意が必要です。
つまりスパッタリングメッキは形状に向き、不向きなどの制約があるのに対して、メッキ塗装は
比較的形状に自由度があるということです。 (ただ、スパッタリングメッキでも品物の形状に
よっては全面メッキすることもまったく不可能というわけではありませんが、やはり困難な形状
の品物が一部あります) なお、クロームメッキなどの電解メッキも同様に形状制約があります。
●以上のようなことから基本的にはメッキ塗装に比べるとスパッタリングメッキのほうが品質的
に優れているということができますが、品物の形状や素地状態によってはやむを得ずメッキ塗装を
選択せざるを得ない場合もありますので、ある意味「適材適所」という言い方もできます。
ですので、スパッタリングメッキが可能なものはできるだけスパッタリングメッキでおこない、
できないものは仕方ないのでメッキ塗装で、というような選択でよろしいかと思います。
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